明月夜にて 2話
最近姉さんの様子がおかしかった
私自身、姉さんの様子がおかしいことに気づいたのは最近で、それでも私たち姉妹の間でワカラナイことは無かったはずなのに、、、
秋葉ちゃんと四季くんと遊んでいる時すら
ほら、気がつけばどこかを見ている
「お腹がいたい」と言って私たちと遊ばない回数も増えて__。
日に、月に、増えて増えて増えて増えてフえてフエてフエてフエテフエテフエテフエテ、、
怖い。
そのうつろの瞳は、、、、私は見たことが無い、、、、
怖くて、、、悲しくて、、、
ねぇ姉さん?
なにがあなたをそうさせているのですか?
もしかして
私のことが嫌いになってしまったの___?
それとも、、、、、、、?
「ああ?窓際のアイツ?何だってそんな事きいてくるのかね、お前?」
くっくっくっとワラってノタまってる少年に少々苛ついてきた
何がそんなにおかしいんだろうか
「、、、、、、、、#」
「おっとっと、、怒るなよ。人を裏庭に呼びつけといてさ、そんな内容はないだろ。琥珀」
「だって、、、屋敷の人に聞いても、みんなみんな知らん振りで”そんな子はいない”って、、、でもあの子は見てるんだよ?窓からいつも、こっちを____。」
「さぁなぁ、、、出てきたくないんだからでてこないんじゃねぇの?病弱そうだし病気ってのもありえるかもなぁ」
裏庭から振り返って窓を見る
その窓は今はカーテンに閉ざされていて中を見ることができない
思えば、あの少年がいつもこちらを見ていたのは、私たちが庭で遊んでいた時に限っていたような気がする
私と翡翠ちゃんは離れで生活をしているために、
そして食事以外は屋敷に入ることを許されていないために、
あのお屋敷で彼に会うことは、ほぼ在り得ない状況なのだ
そのため、屋敷に出入りできてなおかつ口の軽そうな遠野家長男に話を聞こうと思ったのだが、、、、、
如何せん彼の徹底したマイペースぶりを失念していたようだ。
「あーでも翡翠なら何度か話したことあるらしいぞ?」
!?
「翡翠ちゃんが!?」
「何でも秋葉の人形をもう一度見ようと思って屋敷に侵入しようとしたとき、ちょうどあの窓のそばの木によじ登ったとこでガラっっと窓を開けてさ
「その木の枝、、、、腐ってるよ」
ってさ。ちょうど翡翠が乗っていた枝がな、本当に腐ってて、あいつが言わなきゃ今頃頭からまっさか様だったってさ」
、、、、、、、、___。
「私聞いてない、、そのこと、、」
「ああ、だって翡翠が誰にも話すなっていってたもんな。アイツ顔を真っ赤っかにして半べそかいてたんだぜ」
くっくっくっと実際、私に告白してしまっているのにマッタク悪びれた様子も無い四季
まぁそんな奴に話してしまう妹も妹だろう、どうせなら私に言ってくれれば良かったのに_。
「あ、このことは翡翠には内緒だからな?さもなきゃまた痣だらけにされちまう」
「あらあらそれは困りましたね〜。そうだ!お夕食のデザートはプリンらしいんですけど、四季さまプリンはお嫌いでしたよね?」
「いや、好きだぞプリン」
「さて翡翠ちゃんにみっこk・・・・・」
「いえ、プリン嫌いなんでどうぞ食べてください」
(よし、デザートをゲットだ・・)
ちなみに明日メロンという形になっている
なぜ私が遠野家の料理のメニューについて詳しいかと聞かれると
最近、私が料理を担当するメイドの教えを受けているという背景があったりする
っまぁプリンはあとで翡翠ちゃんと分け合って食べよう
「あーそれでな琥珀_」
「なんですか?明日のデザートはメロンですよ?」
「いや、そうじゃなくって、、、、、、、っていうかおい!明日もぶん取る気か、お前!」
あはー あれはすでに私のものですから〜
と言うようなとびっきりのエガオを見せてあげましょう
「いやいやいや、まてまて!、、、いい話してやるから明日からはやめろって」
いい話?
「そう、とびっきりのな」
にかっと悪がきの顔をのぞかせながら彼はワラった、、、
「で琥珀___”七夜”って知ってるか?」
遠野家当主_遠野槙久
次の文は彼の手記より引用されたものである
1、
私は人に出会った。
それは紛れもなく人であり、
紛れもなく______七夜。
言い表せるとしたら、それは己が直視を欺かれた物に限るだろう
ふざけてる、ああ、あまりにもふざけていよう、その姿、その形容
それでも”人”として在りえるのか?
私の目の前で鬼を、外道から恐れられる鬼を殺し、砕き、完膚無きに、この世から、消し去り
、そうするものが。
それとも、
あれが人として本来あるべき姿なのだろうか
斎木はもう使えないだろう
だがこちらとしては好都合な話だ
もう少し泳いでいてもらおう
2、
巫条、浅上を押さえた
これでいい
七夜を退魔から孤立させることに成功した
今更、両儀などの力を借りることなどできまい
今頃は長野の山奥にでも引いているのだろう
もちろん、この期を逃す手はない
軋間の倅に貸しを作った甲斐があるということだ
奴はすでに還ってしまっている
だが、これはあくまで諸刃であることを忘れてはならない
あわよくば、共倒れを
3、
なぜこうなってしまったのか
軋間の手を借りたときからか_。
それとも
七夜を滅ぼしたときからか_。
辿るのならそれはまさにあの時、
七夜 黄理 という殺人鬼に目を奪われた時こそだったのだろう
満月の夜_。
ついに、七夜を滅ぼした
この身は不覚を取ったが狙い通りというものか、軋間の倅には良く働いてもらった
、、、これで混血たる我らの危機が訪れることはないだろう
、、、だが、奴は私に呪いを残した
拭っても拭いきれず、
抗っても抗いきれず、
我が身を締め付ける反転衝動がそれだ
抑えきれない、これでは私も軋間のように堕ちるのも時間の問題だろう。
傘下に置かれた巫条の分家から引き取られた姉妹に罪はない
だが、事が自体だ。
この身に限界がくれば、私自身どうするのか、ワカラナイ
七夜の呪いに対して奴の一人息子を引き取ってやったが、
笑えないほどに効果がない
むしろ、
奴こそが七夜の残した呪いであるかのように、、、、、、、
私はそれ抗おう
追伸、
七夜の一人息子を家に引き取ったとき
呼応するように秋葉に反転が訪れた、
能力は「略奪」「共有」
特に「略奪」には目を見張るものがある
口惜しい。後8年秋葉が早く生まれていればこのような事にはならなかったかもしれない
しかし「略奪」自体も使い方を間違えれば諸刃でしかない__。
七夜の息子は呪われている、、、、、、、、。
「姉さん?どこにいったの?」
夏の日差しが影を生んで、そこに少しだけの安らぎを生む。
私はその加護を受けて少しでも力を取り戻そうと待機し続ける
つまりは日陰で涼んでる訳なのだけれども、、
何時もの通り、何時もの午後、秋葉ちゃんと姉さんと四季君と共にかくれんぼをしていた翡翠はふと、、一緒に隠れていた姉の姿が見当たらないことに気がついた。
いつもの通りのかくれんぼならば、姉は傍にいるはずなのだ
それは、間違いない_。
しかし、それがふと気づいたときには逸れてしまったようだ、、、
「姉さん?」
まるでたった一人の肉親に置いていかれてしまったようで寂しくなる
まさかもう鬼にみつかってしまったとか、、、、、?
それはないと、翡翠は確信してる
だって今の鬼は秋葉ちゃんだし、足の速さじゃ私たちは負けない
捕まるといったら鈍感な四季ぐらいだろう、なぜか、彼は、妹に弱い、、、、
だから姉さんはどこかにま隠れているのだろう、そう思う
私を置いて?
ふと、不安になった
私たちはいつでも一緒だ、いつでも2人で1人、そうだったはずなのに
それは成長、
私と姉さんは同じとして生まれながら変わり始めてきている
性格や感情ではなく、発育や体の成長でもない
何かが変わろうとしている、、、
そんな不安がよぎった
どうして自分がそんな不安になるのか
そもそも何を恐れているのかも分からずに
不安になって
ガザガザガザガザガザッ
庭の草木を掻き分ける、私たちの胸ほどまである庭の草はこの際邪魔だ。
だだ、姉さんを探す
離れたくない、その一心でさがし始める
日差しの中に踊り出て、新しい草木を掻き分ける
途中木の枝が服に引っかかって邪魔になる、
邪魔だ、邪魔だ、邪魔だ邪魔だ邪魔だジャマダジャマダ
なんて、暑い___。
心はこんなに冷めているのに、
体だけが夏の日を浴びて燃えているかのよう
途中鬼に見つかったっていい
だだ、姉さんがみつかればいい
そうやって草木をわけてさがしてさがしてさがして
「あ、翡翠ちゃんだ」